大阪地方裁判所 昭和26年(ワ)3354号 判決
原告 山本秀夫
被告 佐竹長太郎
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は、大阪市浪速区北日東町四十九番地の十七地上家屋番号同町四百四十二番木造瓦葺二階建居宅建坪五坪八合六勺、二階坪四坪九合の家屋が原告の所有に属することを確認する。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として請求の趣旨記載の家屋は原告が昭和二十六年三月五日訴外池宮繁雄から代金十万円で買受け、昭和二十六年五月八日大阪法務局受附第一〇八一六号を以て所有権保存登記を経由した原告所有家屋である。然るに被告は右家屋に対する原告の所有権を争い被告の名を以て右家屋を訴外石川量啓に賃貸しているから被告に対し、右原告の所有権の確認を求めると陳述した。<立証省略>
被告訴訟代理人は原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として被告は昭和二十四年七月十日建築業者たる訴外池宮繁雄から原告主張の地上に存する木造瓦葺二階建住宅二戸一棟(本件家屋はその一戸に当る)延建坪十九坪二合五勺を代金十五万六千百二十二円で買受けその引渡を受けたものであるが、当時右家屋は未完成であつたので被告は自己の費用を以て建築を完成し、水道電気設備を施し、畳建具を備えて他人に賃貸し、今日に至つたものである。そして右家屋は池宮が建築許可も無く建築に着手したもので、右売買当時新築届もしてなかつたので被告の為に家屋の所有権移転登記は経ていないが、後日池宮から建築許可書その他所有権保存登記に必要な書類の引渡を受ける約束で被告からその引渡請求中に池宮は刑事々件を惹起し、行方を晦ましたものである。従つて右昭和二十四年七月十日以降池宮は本件家屋に付何等の権利なく、原告の父山本佐太郎は被告が買受後被告を訪れ買受の事情及登記の有無を尋ねたので、被告は同人に対し前述の事情を告げて置いたところその後再び被告方に来訪し、池宮は税金滞納の為本件家屋の敷地を公売処分に附せられ、自分が買取つたから代金六千円を支払えば土地の所有権を被告に譲渡すると申出たので、被告は該代金を支払つたが後に右公売に附せられ土地は本件家屋の敷地と異なることが判明したので、代金の返還を受けたのである。それ故本件建物の所有権が被告にあることは原告の代理人たる山本佐太郎の熟知するところであるに拘らず、昭和二十六年三月二十九日原告名義を以て虚偽の新築申告書を為さしめ、之に基いて原告主張の所有権保存登記を経由したもので、右新築届及保存登記は法律上無効で原告は民法第百七十七条に所謂第三者に該当しないから被告は自己の為に所有権取得登記なくとも、右所有権を以て原告に対抗し得べく本訴請求は失当であると述べた。<立証省略>
三、理 由
成立に争のない甲第一号証の一、二、同第二号証、証人山本佐太郎の証言及同証言により真正の成立を認め得る甲第三号証によれば、原告はその父山本佐太郎を代理人として昭和二十六年三月五日訴外池宮繁雄との間に原告主張の家屋に付原告を買主とし売買契約を締結し、同年五月八日原告主張の通り所有権保存登記を経由したことを認め得る、然るに被告は之より先昭和二十四年七月二十日右池宮繁雄から当時未完成の右家屋を買受け之を完成し、附属設備を施し、家屋の所有権を取得したと抗争するに付按ずるに成立に争のない乙第一号証、証人石川量啓の証言及被告本人の供述に証人山本佐太郎の証言の一部を綜合すれば、訴外池宮繁雄は建築業者で右家屋の建築に着手したが荒壁を塗つた程度の未完成の侭昭和二十四年七月二十日右未完成の建物を被告に売却し、被告は残余の工事を完成し、水道電気設備を施し、畳建具を附加した上昭和二十五年六月頃右家屋を訴外石川量啓に賃貸したもので、昭和二十六年二月頃池宮繁雄がその所有土地を税金滞納の為公売処分に附せられた際、原告の父山本佐太郎は被告から本件家屋を取得した事情を聴取し敷地を代金六千円にて買取を求め、該家屋が被告の所有なることを了知した事実を認め得べく、原告の立証によつては右認定を覆すに足りない。思うに家屋を建築した者は建築の完成と同時に原始的に該家屋の所有権を取得するもので、右認定の通り被告が本件家屋の建築に着手した池宮繁雄から未完成の建物を買受け之を完成した以上被告は之によつて家屋の所有権を原始的取得し保存登記を経由することは所有権取得の要件でなく、従つて右所有権は登記の有無を問わず何人に対しても之を対抗し得るものと解するを相当とする。然らば原告が右山本佐太郎を代理人としてその後池宮繁雄との間に右家屋に付売買契約を締結しても之無権利者との間の売買にして之により所有権を取得する理由なく、之に基ずく保存登記も亦法律上何等の効力がないものと云わねばならぬ。仍て原告の所有権を前提とする本訴請求は之を失当と認め、之を棄却すべきものとし、訴訟費用の負担に付民事訴訟法第八十九条を適用し主文の通り判決する。
(裁判官 藤城虎雄)